母が冥途に行きかけた(2)

こんにちは。今日も楽しいマキオカです。

脱水症状で入院した母に、拘束具を付けるって、どういうこと?
わたしのイメージだと拘束具って、せん妄症状で徘徊してしまうとか、暴力を振るってしまうような人にするものだと思っていた。

母はボケ症状もなく、身の回りのことはすべて自分でやっていたし、孫や娘の分まで料理を作り、振舞うような日常生活を送っていた。
その母に何故拘束具?

翌朝、病室に入ると、オムツをはかされ、点滴されている腕は手袋状の抑制具を装着され、ベッドに固定された母の姿が目に飛び込んできた。
あまりの変わりように我が目を疑う。

「お母さん、具合はどう?」と話しかけても、うっすら目を開けるだけで何の反応もない。

母は神経質で、いつもは横になっていても誰かが部屋に入っただけですぐ起きてしまう。
その母が、頬を触っても体を揺すっても、ぼんやりと薄目を開けるだけですぐまた眠ってしまう。

看護師の方にお話を伺うと、夜騒いだため身体拘束をしたとのこと。
薬の使用について聞いてみると「薬は使っていない」と言う。

そんな筈はないだろう。
いくら衰弱して体が疲れていようが、普通に眠っているのとは明らかに違う。

後から、看護師が言っていた「夜騒いだ」というのは、「トイレに行きたい」と言った母が「オムツでしろ」と言われ、「冗談じゃない」と怒ったことを指していたと分かった。

だが、騒ぐのは当たり前だ。
多少ふらつくとはいえ、何不自由なく日常生活を行っていた人間が、突然「オムツの中で用を足せ」と言われれば「ふざけるな」と言うに決まっている。
ましてやプライドの高い母のこと、言いたいことを言ってしまったがために、拘束具を付けられ薬を飲まされてしまったに違いない。

翌日も病院に行くと、母は昨日と同じように、話しかけようが体を触ろうが、ただひたすら眠っている。
一昨年、旅先で脳挫傷を患った時と同じ表情だ。

あの時は転倒して脳を強打したという納得できる理由があった。
だが、今回はわけが違う。
つい一昨日まで、ここに来るまで、身の回りに氣を遣い、理路整然と理屈を言い、見事に一人暮らしをしていた母だったのに。

ここに入院させていてはダメだ。
このままでは本当のボケ老人になってしまう。

言い方は悪いが、ここは老人栽培施設だ。
この病院はまるで生産農家のように、植物が窒素やカリウム・リンなどをはじめ色々な栄養を液肥で注入するかのごとく、老人を点滴につなぎ、効率的に収穫できるよう、命を長らえさせている。
老人たちは水耕栽培されているカイワレ大根のように、ただひたすらお金を生み出している。

老人たちは、皆一様にボンヤリと空を見つめている。
テレビを見るわけでもなく、おしゃべりするわけでもなく、笑い合うわけでもなく。
その表情からは意思を感じ取ることができない。

いや、植物に意思があっては困るのだ。

医療施設の抱える現実。
人手不足や医療裁判や理不尽な患者やその家族。
そういった現代社会が抱える底知れない闇が、この狭い病室にも深い影を落としていた。

つづく

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気が付いたらキャンプ場をやっていたマキおかんです。

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