母、奇跡の復活!(3)

こんにちは。今日も楽しいマキオカです。

明け方、一泊2500円の安宿の天井を見ながらぼんやり考える。
「やっぱりダメだ。母を置いていっちゃ・・。」

もしこのまま独りで京都の病院に入院させていたら、母は確実に呆けてしまう氣がする。
いかに親切な看護婦さんやお医者様に囲まれていたとしても、身内としょっちゅう過去の思い出話や日常の会話をするのとでは脳に対する働きかけは格段に違うのではないか。

ここで母の人生を変えてしまう訳にはいかない。
一緒に帰ろう。母と。
心は決まった。

それはそうと。

京都のナースって、いいですね。
殺伐としがちな病院で、「どうしてはるんですか~。」なんて京都弁の柔らかいイントネーションが聞こえてくると「京都オンナ、いい!」と思う。
できることならば、こんなナース達に癒されたい・・。
オッサンならずともそう思ってしまう。

まあ、「ぶぶ漬けでもいかがどすか?」に象徴されえるように、柔らかい言葉とは裏腹に結構キツイ方が多いとも聞くが、それもよし。
ただ優しいだけのオンナより、噛みごたえがあるというか芯があるくらいのオンナの方がわたしは好き。

それはともかく。

ふんどし息子と共に早朝の病院に急ぐ。

母に「お母さん、急だけど今日帰ることにするよ。ダメかもしれないけど今から先生に伺ってみるからそのつもりでね。」と言うと「うん、分かった。」と頷く。
力のなかった目が心なしかキラーンと光った氣がする。

とはいえ、母はベッドの角度を変えるだけでも一苦労の状態。
新幹線に乗せることなんてできるんだろうか。
いや、吐こうがつらかろうが、とにかく連れ帰るしか道はない。

ちょうど回診が始まり、運よく主治医の先生がいらした。

すっごく優しい先生なんだけど、突然今日退院させて欲しいなんて言い出したら怒らないかな。
土台無茶な話だよね。
しかも昨日「それでは動けるようになるまでこちらの病院に置いて頂きたいと思います。」とお願いしたばかり。

病院側の都合もあるだろうし。
退院の手続きだってそんなに急にできるはずはない。

が、そんな事は言っていられない。
無理を承知で一か八か切り出した。

「あのぉ、先日からご相談申し上げていた退院の件ですが、今日息子が横浜に帰りますので、できたら母も一緒に連れ帰りたいと思うのですが。」

「そうですか。分かりました。お母様お一人でこちらにいらっしゃるのも心細いでしょう。お母様を診察して、新幹線に乗れそうであれば急いで退院の手続きをしましょう。」

先生、あなた様はなんていいお方なんじゃぁ。
あ、あんたは生き神様じゃあ。

先生は母に「車椅子に座れるか診てみましょう。」と言い、ベッドの角度を変え始めた。

昨日はベッドの角度を60度に上げるのに「眩暈がして氣持ちが悪くなる。」と言って、3回くらいは休んでいた。
固唾を飲んで見守るわたし達。

が、今日の母は「まだ大丈夫。」と、一氣に70度まで上げさせた。
だ、大丈夫なのか?本当に。

どうやら母は「帰る」という目的が与えられ、テンションが上がり、体調も劇的に改善されたらしい。

「それでは立ち上がってみましょうか。」と先生。
いや、なんぼなんでもそれは無理でしょう。

ところが母はナースの首に手を回し、周りに支えられながらもひょいと立ち上がった。
周りにいたナースやドクターも「おー。」という驚きの歓声を上げる。

さらに支えられながらも二歩三歩と歩を進める母。
口をあんぐりと開け、顔を見合わせるわたしとふんどし息子。

ちょっ、テンション上げるにしても程があるでしょ。

もしや後ろから薬師如来様が支えているのでは?
いや、子狐か?
ホントはそんなに悪くなかったんだったりして。
いやいや、そんなハズはない。
だって脳挫傷だよ。
頭蓋骨骨折だよ?

いろいろな妄想が去来しているわたしの目の前で、先生が「これなら新幹線に乗れますね。ではすぐ退院の手続きをしましょう。」と言って下さった。

え?マジで?
自分で言い出したのに、退院できることに驚いたわたし。

でもいつまでも驚いている訳にはいかない。
そうと決まればやることが山ほどある。

横浜の姉に電話をし、とにかく一旦帰宅させてから入院できる病院を探してもらうようにする。
病院から病院への転院でなければそれほど難しくないはず。

母の荷物をまとめ、わたし達の荷物とともにゆうパックで送る。
京都駅まで歩いて3分程の病院だけれど、歩けない母の為にタクシーをお願いし、どの順路だと負担が少ないかを確認する。

わたしは今回初めて知ったのだけれど、新幹線には車イスに乗ったまま乗り込むことができる個室(多目的室というらしい)が1つ付いた車両があり、障害を持った人、事情があり必要と認められた人は、指定席特急券と乗車料金でこの個室を利用することができるとのこと。

JRに行き、切符の手配と多目的室の利用と案内のお願いをする。
車椅子の貸し出しもお願いするが、改札口からしか使えないんだそう。
タクシーを降りて改札までの移動はどうしたらいいんだ?

まあ、いい。
改札まで一番近くに行けるルートを探そう。

かなり時間がかかったが、次は病院で退院の手続きをする。
合間に姉と電話でやり取りをし、帰ってからかかる病院を決める。
心配してくれていた親戚にも事の成り行きを説明し、今日一緒に帰宅する旨伝える。

あれやこれやを走りながらこなし、やっと母の病室に着くと。

なんと朝会った時はぼんやりとした頼りない目をしてベッドに横になっていた母が、着替えをして居住まいを正し、化粧までしてベッドに座っていた。

そしてわたしの顔を見るや「わたしのブラシはどこにあるの?」と聞いてきた。
「ブ、ブラシ?さっき鞄に詰めてゆうパックで送っちゃったけど。」
「あれがないと髪がまとまらないじゃないの。それにこの服じゃなくてあっちの服の方がよかったのに。」

いや、あの、髪や服がどうのこうのというより帰れるだけでもめっけものというか。
手も動かしづらかったはずなのに、化粧、どうやってやったの?
っていうか、今朝まで起きていられなかったのに、そんなに長い時間座っていて大丈夫なの?

「お昼はわたしがご馳走するから、どこか美味しいところで食べましょ。病院の食事、不味かったから美味しいものが食べたいわ。」

不味いもなにもついこの間まで味覚障害を起こしていたし。
しかもこの状態で外食できるわけないでしょうがっ!

それにしても我が母の凄まじさよ。
80歳も半ばで脳挫傷を起こし昨日までぐったりしていた人間が、退院するからといってこの状態で身支度を整え、化粧をし、人目を氣にするとは。

凄過ぎる・・・。
が、オンナとして見習わなくては、と心から感心するわたしなのでした。


つづく
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気が付いたらキャンプ場をやっていたマキおかんです。

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